プラッツの最新作である一連の紫電改シリーズは、プラモデルや玩具の類に限ればインジェクション技術の限界に挑戦したかのような精緻でシャープなモールド、立錐の余地もないパーツの整合性など、極めて高い精度の設計と成型技術を駆使して生産されていることを実感できる、素晴らしいキットだ。
スタイリングも、無骨で力強い紫電改のイメージを見事に捉えている。
紫電改の派生型には大きく分けて、前期型と垂直安定板を小型化した後期型が存在するが、今回製作したのは前期型である。 これは、先行で発売された後期型のパーツ一式に前期型の尾部が別パーツとして同梱されており、胴体パーツから尾部を切り離し、前期型の尾部を取り付けることで、前期型を製作することが可能となっている。
当初、尾部の切り離しにはある程度の難度を要すると思っていたのだが、胴体パーツを確認すると、尾部の切り離し位置に前期型発売前には無かったリブが追加されていた。<画像1:右が後期型パッケージの胴体、左が前期型パッケージの胴体> また、リブのすぐ後ろの肉厚が一段薄くなっていて、切断位置が正確に出るように配慮されている。どうやら金型を改修して、尾部の加工をし易くしたようだ。 実際、このリブがあるおかげで工作が楽に進めることが出来た。
ここで、これから製作される方へアドバイス!
胴体パーツが前期型へ対応したことにより、今後生産される後期型もこのパーツに切り替わっていくと思われる。
前期型を製作する場合は特に問題は無いが、後期型を製作する場合、前述した尾部の切断位置の肉厚がめちゃくちゃ薄くなっており、胴体の接着時、この部分に接着剤が流れ込んでしまうと、まず間違いなくグニャグニャに溶けてしまうか、最悪の場合溶けて穴が開いてしまう恐れがあるのだ。 見ての通り、光に当てると透け透けといった具合である。<画像2:透け透けな切断位置> 従って、後期型を製作する際は、この部分を瞬間接着剤などで確実に裏打ちしておくことをお勧めする。
そのようなわけで、現在市場に流通している後期型は今後貴重になるかもしれないので、後期型を製作される方は今のおうちに確保しておいたほうが良いかもしれない。
さて、話題を製作記に戻す。
キット自体は以前製作した P-51
同様非常に組み易く、ストレスを感じることは無い。食玩収集から
1/144
プラモデルの製作を始めた方には、胴体の加工はやや敷居が高いかもしれないが、落ち着いて作業を行えば必ず上手くいくであろう。 とにかく出来が良いので、ディテールアップすることも無くそのまま組んでいる。 機銃とピトー管くらいは真鍮に置き換えようかとも考えたが、精緻な造型を切り落とすのが勿体無いので、キットのままを生かす。 そのままでも十分なディテールを有しているので、むしろ塗装に力を入れたり、複数製作して塗装やマーキングのバリエーションを楽しみたいと思っている。 その気になれば、フラップダウンやシートベルトの追加なども、対象が小さなだけで難しい工作ではない。
塗装であるが、前作の 1/72
コルセアあたりから、自分なりの塗装プロセスが確立しつつある。
(1)まず、サーフェイサー(#1200)を吹き、乾燥後にゴミを取り除き、面荒れが発生した個所の表面を
#1000 と #1500
のペーパーで整える。
(2)ファンデーション
ホワイトを吹き、下地作り。 なお、味方識別色(主翼前縁の黄橙色)は下地乾
燥後に吹いておき、マスキングしておく
(3)1日置いて乾燥後に下面の銀を吹き、その上からクリアーを吹いて塗装面を保護する。
ちなみに、当初ガイアカラーの零戦色セットに含まれる「スターブライト
ジュラルミン」を使おうとし
たのだが、粒子が粗く 1/144
スケールには向かないうえに、φ0.3mm
のハンドピースが一発で
目詰まりした。(何じゃこのカラーは!?)
(4)再び1日置いて乾燥させ、下面をマスキングする。
(5)機体色を吹く。 この機体色は、クレオスの三菱系濃緑色とインディーブルーを
50%:50% の割
合で調色したものを使ったが、イメージよりも明るい印象になってしまったので、その上からシャ
ブシャブに薄めた黒を軽く吹いて落ち着かせた。 調色時にダークグレーあたりを混ぜておけば
もっと良い結果が得られたかもしれない。
(6)乾燥後、マスキングを取り、塗装の剥がれや吹き込み個所をタッチアップ。
(7)修正が終わったら、さらにその上からクリアを軽く吹く。
(8)乾燥後、デカールを貼る。
(9)1日置いて十分に乾燥させてから、クリアをやや厚めに吹く。
(10墨入れを行い、またまたクリアを軽く吹く。(ごく軽く)
(11)更に1日置いて十分に乾燥させてから、塗装剥がれをチッピングで施す。 1/144
は何しろ小
さいので、スケール感を損ねぬように、若干渇き気味の筆先を上手く利用して、手早く擦れ気味
に付着させるようにすると上手くいく。
(12)最後に仕上げの半つやクリアを厚めに吹き、デカールと表面との段差と光反射をなじませる。 |
仕上がりの品位を追求するうちに上記のような工程になってしまったが、まだまだ理想に達していない。
書き出してみると、知らず知らずのうちにかなりの手間を掛けていたことが分かる。実際、それなりに効果を実感できているのだから、無駄ではないようだ。(笑)
こうして完成した紫電改だが、大判画像でも鑑賞に堪えられる程度の仕上がりを得られたと思う。
私の紫電改に対する印象であるが、いかにも重戦闘機といった力強いスタイルが気に入っている。
それと同時に、なぜか紫電改を見ていると、ヘルキャットの面影がちらつく。
一方は局地戦闘機であり、他方は制空戦闘機であるから、運用目的も性格も全く異なるのであるが、
2000
馬力級エンジンを搭載した重戦闘機で、最大速度も
600km/h
前後と数値レベルでの共通点も複数見られることと、何よりもぶっとい機首の上部の造型が似ているように感じるからだと思う。
振り返ると、1/144 の作品は P-51D
以降、実に1年ぶりの製作であったことに気が付く。
まぁこの一年、完成機数も少なかったわけで...。実際、模型どころじゃなかった諸々の事情があったのも一因であるが、30数年来の
1/144
愛好者(自称)としてはもっと完成機数を増やしていきたいものだ。(笑) (完成:
2007年10月17日)
※画像をクリックすると、XGA サイズの大判画像がポップアップします。
拙作の画像ではありますが、宜しければ壁紙などにお使い下さい。
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