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■ PX-W4012TA 使用レポート

2002年２月時点で最速の書き込み速度である、40倍速の書き込みに対応した、プレクスター PX-W4012TA を使用する機会を得たので、いち早く皆さんに使用感をご報告します。

実は、１月中旬には既に試作品をメーカーさんからお借りしていたのですが、試作段階による評価を掲載すると公正さを欠く可能性があったので、評価項目を量産品にて再確認してから、ご報告する事と致しました。

新製品レポートとはいえ、CD-DA の高品位な書き込みという、当サイトの視点を中心に解説する事と致しますので、どうぞご了承下さい。

●特徴
メーカーの発表によると、このドライブの特徴は以下の通り

高速書き込みと高記録品位を同時に実現

Zone CLV

PowerRec-II

BURN-Proof
　etc.

当サイトでは特に、高記録品位という点を重点的にテストしました。

●PX-W4012TA が謳う、高記録品位について
上記の特徴のうち、高記録品位を実現させるためのアプローチとしては、

電源回路を強化し、安定した電源供給を実現したこと。

トレイの成形色を黒とすることで、クロストークの原因となるレーザーの乱反射を低減させたこと。

書き込み時のレーザー出力を+/-２段階の範囲で手動設定出来る、VariRec 機能を搭載し、書き込み品位を微調整できること。

などが挙げられます。　YAMAHA の CRW3200E などに搭載されている、AudioMaster のような、ATIP に対して、線速を意図的に早めるといった、変則的な手法は使っていません。

なお、PX-W4012TA が対応する書き込み速度は、データ CD と CD-DA とで対応する書き込み速度に差異が見られます。

データ CD：4x, 8x, 16x, 20x, 24,x 32x, 40x

CD-DA：4x, 8x, 16x, 24x

ご覧のように、もはや等速と倍速書き込みは選択できません。　
まぁ、これだけ高速の書き込みを制御するサーボでは、逆に低速を制御するにはそのための分解能が荒過ぎると推測できますから、無理からぬ事かと思います。メーカーさんに確認してみましたが、やはり同様のご回答をいただきました。
現実問題としてメディア側から考えた場合でも、現行の高速書き込みに対応したメディアでは、等速や倍速で書き込んだ場合のレーザーコントロールが非常にシビアになるので、良い結果は得られにくい事は明白です。
残念ですが、書き込み速度の高速化が当たり前の現状では致し方ないことかも知れません。

また、CD-DA では 32x 以上の書き込みが選択できません。これに関してもメーカーさん曰く、「40/32倍速
CD-DA記録において一部メディアと旧式ポータブルCDなどの組合せでノイズが稀に発生するためこの様な制約となっている」とのこと。　書き込み品位を犠牲にしてまで、最高速に対応することはしたくないと言うことのようです。
それ程 32x, 40x という書き込み速度は対応が難しいということなのでしょう。まぁ、実際こんな高速で作成した CD-DA と言うのも現実的ではありませんから、良しとしましょう。（笑）

●準備
実際の書き込みテストは以下のように行いました。　あくまでも、一般ユーザーが普通に使う場合を想定し、外付けケースや電源ユニットにこだわるといった部分は、機を改めてご紹介したいと思います。

設置
メインマシンに普通に内蔵。　但し、簡単なノイズ対策として、電源ラインをフェライトビーズに二重に通して取り付け。

書き込み
4x 書き込み

使用メディア
今回使用したメディアは、以下の通りです。
いずれも、ごく普通に売られている 2002年１月時点の現行品です。（6. 旧74ZY は除く）

1. RICOH 74min 20x	2. Spark 74min 32x

3. maxell 80min 32x 対応（誘電製）	4. maxell 80min 40x/32x
	準備中	準備中
5. 誘電 74TY 74min 24x	6. 誘電 74ZY 74min 8x

7. Mr.DATA 74min 24x	---

●判断基準
オリジナルソース（リッピング元のプレスＣＤ）に対する音質変化。
●総評
いや～、本当に驚きました。オリジナルソースの再現性は非常に高く、CDU948S 以降のドライブでは、トップクラスの書き込み品位。（恐らく一番！）
但し、全てのメディアの試聴を通して受けた印象は、総じてオリジナルよりも高域がわずかに派手気味となるということでしょうか。一般的に若干高域が明るい方が綺麗に聞こえるので、おそらく多くのユーザーにとっては、CDU920S や CDW-900E と言った往年の名機よりもずっと高音質に聞こえると思われます。
しかし、オーディオメーカーの技術屋や音楽家、及びハイエンドオーディオの音を知っている方などは、その高域成分にやや違和感を感じるかも知れません。とりわけ、クラシックのマスタリング等では、この固有の癖をどう扱うかでエンジニアが頭を使うことになるでしょう。まぁでも、本当に僅かな違いですから、気にならない人は多いとは思いますし、往年の業務用 CD ライターにも固有の癖がありましたから、マイナスと言える性質のものではないと考えます。
（そもそも、このモデルはあくまでも民生品ですし、マスタリングには PlexMaster の存在がありますから、レコーディングエンジニアがこのドライブを使ってマスタリングする機会はあまり無いでしょうね。ATAPI だし。(^^; ）
●VariRec について
数種類のメディアで VariRec を試しました。
＋（プラス）方向では、低域と高域に厚みが増し、－（マイナス）方向では音が乾いたように感じると同時に、か細さが強調される印象でした。　メーカーさん曰く、「＋（プラス）方向では低域が豊かになり、－（マイナス）方向では低域が減少する傾向となる」とのこと。私が＋で低域のみならず高域にも厚みが増すように感じたのは恐らく、低域のボリューム感が増したため、低域と高域のバランスが向上したように感じたのだと思います。－で乾いたようなか細い音と書いたのですが、これはまさに低域が落ちた音です。高域が相対的に強調されるのでカスカスした印象になります。
いずれにしても、通常の書き込みで満足した音質が得られなかった場合、試す価値はあります。　とても楽しくて、マニア受けする機能だと思います。
●メディア毎の音質

RICOH 74min 20x 対応の現行品
オリジナルソースと比較すると、全体的にハイ上がりな傾向が見られる。
高域の透明感と分解能が高く、ヴァイオリンの高音域の表現力が生き生きとしている。　全体的に質感が良く再現されており、臨場感は特筆もの。　PX-W4012TA と非常に相性が良い印象。VariRec +2 を試したが、元々ハイ上がりな傾向なので、あまり効果は感じられない。

Spark 74min 32x 対応の現行品
同じ製造元と言ってしまえばそれまでだが、RICOH そのものと言って良いほど、よく似た音質。　RICOH の廉価版と位置付けても差し支え無し。
16x 対応品以降、急に音質が向上したのでは？？？

maxell 80min 32x 対応（誘電製）
誘電 X type の退屈な音色が、遅い線速によって強調される。
分解能が悪くソフトな印象だが、癖が無いので聴きやすい。

maxell 80min 40x/32x （フタロシアニン）
RICOH に似て、高域がやや明るく透明感があるものの、80min メディアの泣き所である分解能が低いのはしょうがない。音の微妙な表情は影を潜めるが、数ある 80min メディアの中では意外に良いと思う。
※このメディアは、テスト中の段階ではまだ市販されておらず、量産同等品のサンプルをご提供いただいてテストしました。

誘電 74TY 74min 24x 対応の現行品
全域フラットで聴きやすいが、分解能が劣り質感は全く感じられない。
しかし、VariRec +2 で有効とすると、同じメディアとは思えないくらい、低域と高域の厚みが増し、分解能も一気に向上した。　対して VariRec -2 では、中域～高域のやや乾いた音が目立ち、繊細さを強調する傾向となる。

誘電 74ZY 74min 8x 対応の旧品
全音域を通してフラットな音色でクォリティが高く、分解能に優れる。
オリジナルソースにかなり近い印象だが、やや高域が明るめとなる。CDU948S で焼いた場合に肉薄する優れた品位。
但し、VariRec +2 では、低域と高域の厚みが更に増すため、ちょっとくどくなりがち。
小細工せずに、通常モードで焼くのがベストだと感じた。

Mr.DATA 74min 24x 対応の現行品
平凡な音。フラットで聴きやすいが、分解能は低い。
音楽には不向きかと思う。

●ライバル機（？） YAMAHA CRW3200E との比較
CRW3200E との比較を行いました。書き込み条件は全く同じ。
以前の CRW3200E の試用にて作成した CD-DA の中で、同じメディアで焼いたものは３枚のみだったのですが、簡単な聴き比べには足りるでしょう。

RICOH 74min 20x 対応の現行品
AudioMaster モードを駆使しても、角が取れた平凡な音質。
PX-W4012TA で誘電 X type を焼いたときと同様の音質傾向を示す。
CRW3200E 発売当初の試聴では、もっと好印象であったが、PX-W4012TA との相対評価ではこのように評せざるを得ない程の差を感じた。

誘電 74ZY 74min 8x 対応の旧品
通常モード：
そこそこの音は鳴っているものの、メディアのクオリティを出し切れていない。
AudioMaster モード：
その傾向はガラリと変わる。　ぞくっとするくらいの優れた分解能と共に、生き生きとした鮮度が伝わってくる。
さすがに、PX-W4012TA をもってしても、AudioMaster モードに軍配が上がろうか、という印象。

三日天下か！？ CRW3200E（汗）
PX-W4012TA との比較を終えて、改めて CRW3200E に対する評価をするならば、以下のように言えると思います。

CRW3200E の印象を一言で表すと、AudioMaster モードに尽きます。
逆を言えば、このモードを使わない通常モードで焼いた CD-DA の音質は、全く冴えません。　しかし、AudioMaster による効果はてきめんで、バーチャルながら 63min メディアの特徴を再現することに成功しています。
但し、この AudioMaster モードは、メディアによる効果の程に非常にバラツキが大きく、誘電旧 74ZY のように非常に効果的なメディアもあれば、RICOH 74min のようにあまり効果的に作用しないメディアも存在し、安定しません。
発売直後に YAMAHA 主催の試聴会に於いても、複数の方から誘電 Master では効果的だったが maxell Pro-X ではあまり効果が分からなかった、という意見が聞かれたものでした。

つまり、AudioMaster OFF では、あまたの現行 CD-R/RW に対するアドバンテージは殆どありません。　しかし、変則的な書き込み方でも構わないから、とにかく高音質の CD-DA を焼きたい、と言う方は CRW3200E が最適。所詮は個人使用の範囲なのだから、これはこれで賢い選択だと思います。　但し、AudioMaster 機能は、メディアを選びます。　相性の良いメディアを使えば、大変優れた音を聞けますが、そうでない場合は AudioMaster を ON にしてもさほどの効果は出ません。

●まとめ
PX-W4012TA を使ってみて驚いたのは、現行のメディアでも大変品位の高い CD-DA を焼けることです。
あくまでも正統派として高音質を追求するのなら、PX-W4012TA を選ぶのが最適だと思います。
付加機能としての VariRec は、寝ぼけた音のメディアが生まれ変わる可能性を秘めています。ただ、これもメディアによってはあまり効果が感じられない場合もあります。　
今回は客観的な評価のため、ごく普通に取り付けてテストを行いましたが、このドライブは電源強化やノイズ対策で、より一層のクオリティ向上が期待できます。　手を掛ければ掛けただけの結果が得られそうで、今からとても楽しみです。

個人的には、作成した CD-DA が一様に高域が強調される傾向となってしまう点が気になるので、出来れば特定の音域が突出することなく、フラットな特性を保って欲しいところです。ただ、そうすると音のバランスは改善するものの、物足りなさを感じる方が現れることが予想されるので、このあたりは痛し痒しかと。
高速の書き込みのテストについては後日ご報告するとして、少なくとも CD-DA の作成に関しては大変優れた印象です。当サイトにて取り上げている、CDU948S に比肩する製品と断言出来るでしょう。

2002年2月3日　(C) COLT-T
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2002年2月5日更新
AudioMaster が規格外の書き込み､と記述した部分が誤解を招きやすいと言うご指摘を受けました。違いを明確に書きたかったためですが推敲が甘く、やや偏った表現となってしまったと反省しております。　表現が適切ではなかったと判断し､訂正いたしました。　誤解を与えてしまった皆様、申し訳ありません。m(_ _)m