ホーム | webcoms 資料室トップ  

 

webcoms 資料室


 

PX-W4012TS 使用レポート

プレクスター株式会社より、PX-W1210TS 以来久々の SCSI インターフェイスモデル、PX-W4012TS が発売になりました。 実に2年ぶりの SCSI モデルですから、業務用途はもちろん、ヘビーユーザーも大いに期待を寄せていることでしょう。 もちろん私も、ひじょ〜に期待してます。(^o^)ノ
何より、SCSI ドライブの新製品が店頭に並ぶこと自体、とても喜ばしいことです。(笑)

●PX-W4012TS の特徴
ここ最近の同社の CD-R/RW 同様、高品位な書き込みのための様々な特徴を兼ね備えています。

(1)ZONE-CLV
高速書き込み時には、内周を CLV で書き込み、次第に外周に近づくにつれ、あるタイミングで CAV に切り替えて書き込みます。
(2)PoweRec-II
今までユーザーの間では、あまり語られていなかったこの機能ですが、実は書き込み品位の向上に、この機能は重要な役割を担っています。
メディア毎に、書き込み速度からレーザー出力までをリアルタイムに適切に調節します。
これにより、高品位な高速書き込みが可能となっています。セットしたメディアをチェックし、このドライブの実力値で何倍速までの書き込みが可能かを、独自に判断します。
本機では、この機能を手動で Enable/Disable が可能で、手動で明示的に書き込み速度を指定することも出来るようです。

PX-W4012TS

(3)等速(1x)書き込みのサポート
同社の 40x 以上の書き込み速度に対応している CD-R/RW ドライブでは、初めて等速書き込みをサポート。
(4)VariRec
既に同社の CD-R/RW ドライブの特徴の一つとなった感がある VariRec も、もちろん搭載しています。レーザー出力を、標準値から +/-2ステップ可変出来る機能で、これにより、使用する CD-R メディアに最適な書き込みレーザー出力を微調整出来ます。(本機では 1x と 4x 書き込み時に有効となります。)
(5)ブラックトレイ&電源の強化
レーザー光の乱反射を吸収する効果があるので、書き込み品位の向上に寄与します。
もちろん、電源部分の強化も行っています。


ところで、 ここ1年間に発売された製品の中では、最大 20x 書き込みの PX-320A のみが等速書き込みをサポートしていました。一連の 40x 以上の書き込みに対応した製品では、等速の回転制御が極めて難しいため、一定の品位を保った低速書き込みは事実上、4x が限度でした。 従って、私個人としては今回の PX-W402TS による等速書き込みのサポートは、実に喜ばしいものの、ちょっと不安があるのも事実です。 それ故、その書き込み品位がどの程度までチューニングされているか、非常に興味を持っています。

また、ヘビー・ユーザーに嬉しい話として特筆したいのが、PX-W4012TS が単なる PX-W4012TA のインターフェイス変更にとどまらず、ほとんど別物と言うほどの変貌を遂げているということ。実は、PX-W4012TS では、メイン基板の新規開発に加え、水晶発振子および一部のコンデンサに、PLEXMASTER と同じものが搭載されているのです。
当初、プレクスター社内では、PX-W4012TA のメイン基板書き替えというスタンスで考えていたらしいのですが、音質を追求していくうちに、とうとう PLEXMASTER で採用した部品を投入することを決断したとのこと。
ここだけの話(かな?)、プレクスター社内でも PLEXMASTER の性能に近づくことは問題ではないかと、ちょっとした議論になったと聞いています。(^^;
う〜ん、ますます気になるその音質。 では、そろそろ試聴を始めましょうか。(笑)

この他の詳しい製品情報は、プレクスター(株)のウェブサイトをご覧になっていただければ幸いです。

プレクスター株式会社トップページ: http://www.plextor.co.jp/
PX-W4012TS の製品紹介: http://www.plextor.co.jp/products/pxw4012ts/pxw4012ts.html

●準備
今回は SCSI モデルと言うこともあり、購入層は比較的 CD-R に詳しいユーザーやマニアの方の購入がメインになると思いますので、ATAPI モデルのレポートのように PC へ内蔵するという方法では、物足りないですね。 従いまして、オモシロ CD-R 解説 第四回で使用した外付け SCSI ケースに内蔵する事にしました。 やっぱり SCSI モデルは外付けでなくっちゃ! (^o^)ノ
なお、今回は比較用に、同社の歴代 SCSI CD-R ドライブの中でも特に名機の誉れ高い、PX-R820TSi を参加させて、同じメディアを同条件で焼いて、音質を比較してみましょう。


PX-R820TSi(左)と PX-W4012TS(右)

●使用メディア
今回の試聴に使ったメディアは以下の通りです。
いつも使っている製品の他、今回は往年の名品、国産の 8x 三井も使ってみましょう。 あと、最近発売が始まった米国三井の金反射層も試しました。 書き込み速度は、それぞれの対応書き込み速度から判断して、1x または 4x にて書き込んでいます。

1.データ用 CD-R メディア

1-1 太陽誘電 74TY 74min 32x
(ジャケットは 24x品流用)
1-2 RICOH
CD-R 80min 40x

1-3 三井化学
MJCDR74NK(Pink) 74min
1-4 MITSUI ADVANCED MEDIA, INC.
AK707MI0A 74min 8x
1-5 三菱化学
CD-R 74min 1x-16x
 

2.音楽用 CD-R メディア

2-1 太陽誘電
A74CP 74min
 

●判断基準
オリジナルソース(リッピング元のプレスCD)に対する音質変化。

●総評: WOW !! 圧倒的なスケール感!!
一瞬、耳を疑いました。 既存の PX-W4012TA の音色傾向を継承しつつも、ハッキリと分かる品位の高さ。
私がこの音を聴いて思わず叫んだ言葉は、「なにこれ〜! (今までと)全然ちがうじゃ〜ん!!」でした。(^^;
確かに音色は PX-W4012TA のように、高域が伸びやかなのですが、中域〜高域の分解能が半端じゃありません。「あれ?こんな音入ってたっけ?」と思わせるように、また、ややもすれば不自然なほどに、細かな暗騒音までもハッキリと表現してしまうのです。 

PX-R820TSi と比較すると、その違いがハッキリと分かります。 つまり、スケール感が決定的に違うのです。 PX-R820TSi を聴いた後で、PX-W4012TS の音を聴くと、ホールの規模とオーケストラの人数が一回り広がったところで演奏しているように感じてしまいます。 この違いに、私は愕然としました。

●メディア毎の音質

1.データ用 CD-R メディア

1-1 太陽誘電 74TY 74min 32x 4倍速書き込み
記録面に同心円上のうねりが見える、ハズレロット。(^^;
とは言うものの、なかなか良い音を聴かせてくれた。 多少中〜低域に厚みを感じるものの、バランスを欠いているほどではない。 やはりフラットで正統的な印象。

1-2 RICOH CD-R 80min 40x 4倍速書き込み
やはりどうしても、80min メディアの弱みか、分解能が低く、細かい暗騒音が影を潜めてしまう。
しかしながら、フタロにありがちなドンシャリ傾向もなく、高域の伸びも心地よい。

1-3 三井化学 MJCDR74NK(Pink) 74min 等速書き込み
国産のデッドストック。 やはり国産の三井は素晴らしかった。 高域のエネルギー感とスケール感は秀逸。ドライブの長所を良く引き出している。 やや高域の伸びが鋭すぎるものの、このドライブとの相性の良さを感じる。

1-4 MITSUI ADVANCED MEDIA, INC.(米国三井) AK707MI0A 74min 8x 等速書き込み
最近話題の、金反射層メディア。 上記の国産品で気になった高域は、若干マイルドになり非常に魅力的な音がする。 後述の音楽用誘電と、国産三井の中間的な音色で、とても聞きやすい。もちろん分解能とスケール感は圧倒的で、個人的にはこのドライブとベストマッチなメディアの一つと言えそうだ。
これは、国産三井や Professional と同じスタンパーを使っているためだろうか。 往年の金反射層メディアよりは質が劣ると言われているが、現行のドライブで使う分には、大変好印象。

1-5 三菱化学 CD-R 74min 1x-16x 等速書き込み
PX-W4824TA では好印象だったこのメディアだが、なぜか今回は別段良い印象を感じることはなかった。 相変わらずフラットで聴きやすい音であることは確かだが、スケール感がイマイチ。平凡な音にしか感じなかった。

2.音楽用 CD-R メディア

2-1 誘電 74min 
等速書き込み
音楽用は、今回この一種類しか用意出来なかった。
やはり、リファレンスと言うべき、高分解能でスケール感を保ちつつも、フラットで落ち着いた音色は素晴らしい。 クラシック向きと言えそうだが、ロックやポップスだと前述の三井(日・米)の方が適していると思われる。

注意:これらの音質評価は、COLT-T が普通に購入したメディアを客観的に評価したものですが、幾度となく申し上げているように、メディアのバラツキや書き込み環境によって、音質は変化します。
あくまでも参考までにとどめ、最終的には皆さん自身が各々ご確認下さい。

※PoweRec-II で、あれれ???
試聴用のサンプルを焼いているとき、等速で焼いたつもりが、なぜか 4x で焼かれるということが何度かありました。 調べてみると、PoweRec-II が、セットしたメディアに適した書き込み速度を自動的にセットして、書き込んでいたことが原因でした。
結局、PoweRec-II を無効にして等速書き込みを行ったわけですが、通常は PoweRec-II は有効にしておいた方が良いでしょう。
とは言え、少々困ったことも...。 実は、PoweRec-II を有効にした状態で、書き込み速度を等速に設定して書き込みを開始し、結果的には等速以外の書き込み速度で書かれてしまった場合、書き込み中のメッセージは等速(150kb/s) で書き込んでいる旨を表示、焼き上がりのメッセージでも、150kb/s で書き込み終了、となっており、実際の書き込み速度は全く分かりません。 書き込み開始ボタンを押してから、しばらく席を離れていたとしたら、実際に何倍速で書き込まれたかが分からないのです。
これは添付の nero の仕様にもよるとは思いますが、せめて PoweRec-II によって再設定された書き込み速度を表示して欲しいと思いました。
注)上記の件について、プレクスター(株)から回答がありました。 主旨は以下の通りです。
2003年2月の段階で、ファームウェアのバージョンが Ver1.00 のものと Ver.1.01 のものが存在しており、共に PoweRec-II OFF では 1x 書き込みが可能です。この場合メディアの品質に拘わらず強制的に 1x となります。
PoweRec-II ON でも 1x 書き込みが可能ですが、書込み速度よりも PoweRec 機能による判断が優先されるため、設定速度に対してメディアの品位が不適と判断された場合は、1x 書込みを指定しても自動的に速度を引き上げることがあります。
従いましてファームウェアのバージョンに限らず、メディアによっては 1x 書き込みを指定しても、強制的に速度が引き上げられてしまう可能性があります。
この部分についてのバージョン V.1.00 と V.1.01 (以降)の違いは、PoweRec-II ON 1x にて、VariRec が V.1.00 では NG、V.1.01 では OK という点だそうです。

※この件、私自身もちょっと混乱してしまい、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。m(_ _)m

いずれにしても、プレクスター社の PX-W4012TS 製品紹介ページ にある「推奨メディア」に於いて、1x〜**x と書かれているメディアは PoweRec-II ON にて 1x 書き込みが出来ると思いますが、ロットのバラツキ(これがクセモノ!!)によっては、4x となってしまう恐れもあります。

ユーザー側の立場では設定した書き込み速度通りに書き込んで欲しいものですが、メーカー側の立場から考えると、より信頼性の高い書き込みを行うことが重要なので、仕方ないかも知れません。
現行のメディアの品質を踏まえると、悲しいかな、記録品位を損ねてまで 1x にこだわるより、そのメディアに対して適切なライトストラテジを踏むことの方が、重要な気もします。(補足訂正:2003.2.21)

※ 高速対応ドライブで、等速書き込みはやっぱり辛い!?
今回使用したメディアのうち、4種類を 1x(等速)で書き込んでいますが、結論から言うと、今回は 1x と 4x で明確な音質差は感じられませんでした。
1-3 の国産三井ではむしろ、PoweRec-II を有効にして 4x で書き込んだ方が、高域の伸びがなめらかに感じるほどです。 やはり、PX-320A の最大書き込み速度が 20倍速であったのに対し、最大書き込み速度が 40倍速にもなると、低速回転での精度を保つのは容易ではないと言うことなのでしょう。

●まとめ: ここ数年以来の傑作
これまで約1年間、プレクスター社の CD-R/RW ドライブをレポートしてきましたが、今回ほど突出した性能を見せつけられたことはありませんでした。 久しぶりの SCSI ドライブであるという心情的なものと、外付けで使用したという物理的な優位性を差し引いても、明らかに従来の製品とは一線を画す、素晴らしい出来であると言えます。

しかし、冒頭の解説にある PLEXMASTER で採用された水晶発振子とコンデンサは、本当にこれほどの記録品位を生み出すものなのでしょうか。 これを検証するため、水晶発振子とコンデンサが PLEXMASTER 用ではなく、従来の部品が実装されている、量産一歩手前の試作品(プリプロ品)を使って、同条件で焼いたものと音質を比較してみました。
すると、従来部品の実装でも、確かに品位の高い音で、ベースとなった PX-W4012TA に極めて近い音色です。 これに、PLEXMASTER 用部品が実装されると、音色の傾向はそのままに、ぞくっとするくらいの分解能に加え、レンジが広く、スケール感がアップした音に変貌を遂げるのです。 半信半疑で試みたこの実験ですが、図らずも音質の違いを明確に露呈してしまう結果となりました。

正直言って、オリジナルソースから、かなり音が変化しているのは事実です。しかしながら、これは民生機としては妥当な範囲で、むしろこれほどまでにソースの魅力を引き出せる音色は、かつて聴いたことがありません。
過去のドライブとして唯一、これに類似した傾向を有するドライブがあります。 CDR100 がそれで、不思議なことに CDR100 で焼いた CD-DA は、オリジナルソースであるプレス CD を再生しても感じなかった奥行き感が付加され、驚くような繊細かつ広大なスケール感を持った音を聴かせてくれました。(但し、CDR100 は神経質なドライブなので、電源やノイズ対策も含めた、書き込み条件が揃ってないと、上記性能を発揮しません。(^^; )
これに対し、CDW-900E や CDU920 等は、あくまでもオリジナルソースを忠実に再現すると言う設計思想ですから、これらのドライブの音質を好むユーザーでは、PX-W4012TS や CDR100 の音色には、若干馴染めない方もいらっしゃるかも知れません。 強いて言うなら、好き嫌いがハッキリと分かれる可能性も少なからずあると思います。
私自身、本来は「ソースに忠実派」ですが、多くの人が心地良く聞こえる、PX-W4012TS や CDR100 の音質は、幸いにも抵抗無く受け入れられています。
ちなみに、実物の PLEXMASTER は、用途がプレマスタリングであることもあり、民生機である PX-W4012TS のような人目を引く派手さは無いのですが、その透明感と伸びやかな高域は、業務用ならではのもの。一言で言うと、「別格」そのものですね。(笑)
しかし、PX-W4012TS の音色の延長上には、憧れの PLEXMASTER の背中がぼんやりと見えてくるのも事実です。
そう言った観点で PX-W4012TS を見ると、民生機としては希にみる傑作機と言えるでしょう。
PX-W4012TS をベースに、外付けケース&電源強化で、PLEXMASTER Jr.(ジュニア)を作ってみるのも楽しいですね。

2003年1月30日 (C) COLT-T
無断転載・引用・直リンクを禁じます。

 



※当サイトの全ての内容に対し、無断転載・引用・トップページ以外への直リンクを禁じます。

Copyright (C) by COLT-T All rights reserved.
Since 01 Feb.2000 / Since 01 Apr.2000-Official Released