■ 第6回 2001/05/27 HiFi CD-R Unit 製作第2弾 - 正弦波電源を追撃せよ! -
[ 目次 ]
・まえがき
・正弦波電源を追撃せよ!
・組立 - 完成 - 試聴
正弦波電源を追撃せよ!
ベース探し
まず、ベースとなる SCSI ケースを探します。
私の自宅は狭いため、あまり大きなユニットを置くことが出来ません。いろいろ探してみたのですが、今回は Justy ブランドで発売されている、2ベイタイプの SCSI ケース(型番:DSB-202)を採用しました。2ベイタイプといっても、PCショップや通販でよくある、チンケなデュプリケータを作る訳じゃありません。(笑)
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このケースに搭載されている 80W 電源は、12V/5A, 5V/5A と大変余裕があり、CD-R ドライブの瞬間的な消費電流の変動にも素早く応答するであろうと考えたからです。
また、下段のベイにイメージ作成用の HDD を取り付けることも出来るので、まだ私が現役で使っている古いノートPC(ThinkPad 535)でも手軽に利用出来るようにしました。価格は \10,000 前後と、若干高いのですが、汎用性も高く、入手も容易なのでお勧めです。また、通気性も十分です。
さて、先ほど説明した正弦波電源の特徴をもう一度整理してみましょう。
- 家庭用電源を入力する。
- 入力波形の歪みや高調波ノイズを除去し、理論値に近い正弦波の AC100V
を出力する。
- その出力を、SCSI ケースの電源に使う。
- SCSI ケースの電源から出力される良質な DC5V/DC12V は、CD-R ドライブを理想的な条件で動作させることが出来る。
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写真1:Justy
2ベイ SCSI ケース(DSB-202) |
これらの項目を良く見ると、正弦波電源とか何とか言っていても、最終的にクリーンな直流が出力されれば結果は同じことである、と分かります。
もちろんノイズ潰しの基本は元を断つということで、電源回路そのものの見直しや対策が必要なのですが、高度な専門知識を要する上に、一般の方には危険すぎます。
従って、今回の「より簡単に」のテーマは「より安全に」という意味に置き換えていただいても良いでしょう。
それを踏まえた上で、最終の出力段である DC5V/DC12V を徹底的にクリーンにすることで、正弦波電源装置と同等の品質を追求していきましょう。
DC出力のクリーンアップ
CD-R
ドライブの書き込み品質に影響を及ぼすと考えられる要因は、以下のように大別することが出来ます。
- DC出力のレベル変動
- ラインノイズ
- 外部機器から発する電磁波
- DC出力からのリップルノイズ
- 電源から漏れ出るスイッチングノイズ
※スイッチング電源では、リニア電源よりもリップルノイズが発生しにくいらしいのですが、出力段PWMの平滑性が不十分な場合などは、やはりリップルノイズ発生の可能性があると思われます。
まず 1.DC出力のレベル変動ですが、電源ラインに電解コンデンサ(以下、ケミコン)を接続することである程度改善できます。同時に、 2.の突発的なラインノイズも低減させる効果があります。
最近はパーツ売り場で、写真2のようなケミコンがあらかじめ半田付けされたノイズフィルター付き電源コードなる商品があるので、今回はそれを使いました。
皆さんがお使いになる場合は、電源ラインに接続した後、数回通電してみて CD-R ドライブが正常動作しているのを確認できれば良いと思います。
但し、本来この部品を使うには注意が必要です。場合によっては、CD-R ドライブが破損する可能性があるからです。その理由を以下に説明します。
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写真2:ケミコン付き電源ケーブル |
通常、電子機器へ電源を投入した直後、電圧レベルが不安定な状態を経てそのまま通電し続けても、マイコンは正常動作しません。そこで電源投入後、電圧が安定するまでリセット状態を維持し、安定した時点でリセットを解除することにより、マイコンは正常動作を始めるのです。
この動作を一般的に「パワーオン・リセット」と呼んでいます。
この動作には、電源入力とリセット解除に関係する、回路定数の微妙なタイミングが存在しており、何らかの原因によってこのタイミングが狂うと、マイコンが正常に動作しなくなる、つまり CD-R ドライブが正常動作しなくなるのです。
電源ラインは、デバイス動作のための最も基礎となる部分ですから、変化を加えることにより不測の問題を引き起こす可能性があることを肝に銘じておきましょう。
本来ならば、回路を検討して慎重に定数を算出することが最適なのですが、一般ユーザーには相当に敷居が高いことと思います。 従って、ケミコンをフィルターとして使う場合は実際に接続して動作を確認することで良いと思います。 数回確認して、問題なく動作するようでしたら、大丈夫だと思います。(但し、正常動作しない状態で何度も確認を繰り返すと、最悪の場合 CD-R ドライブが壊れますので、ご注意ください。)
さて話を戻しますが、 2.のラインノイズの低減は、ケミコンに加えてフェライトコアを取り付けると更に効果的です。
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写真3:フェライトコア各種 |
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写真4:フィルターケーブルに取り付ける |
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本来フェライトコアは、 3.の外部機器から発する電磁波や、 4.DC出力からのリップルノイズに効果を発揮します。一つのフェライトコアに、ケーブルを2〜3重に巻くとより効果がありますが、長さが足りない場合や狭いところでは小さ目のフェライトコアを幾つも数珠繋ぎにすると同等の効果を得られます。(メーカーのシールドルームにあるケーブル類は、フェライトビーズがびっしりと付けられています。)
このフェライトコアを電源やファンの電源ケーブルなどに沢山取り付けます。オーディオケーブルにも取り付けます。(このケースのオーディオケーブルには、あらかじめ付いていました。)
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写真5:
SCSI
ケース内部(左上)とフェライトコア取り付け後(右下)
(クリックで拡大画像) |
信号線のノイズ対策
次に、SCSI フラットケーブルへの対策です。外付けタイプでは、しっかりシールドされている SCSI ケーブルですが、内蔵ドライブ用のフラットケーブルは、ノイズに対して極めて脆弱です。 ここに 5.の電源から漏れ出るスイッチングノイズなどが容易に飛び込んできて、SCSI デバイスの動作に影響を与える可能性があります。
また、その逆に転送ノイズやスキャンノイズを方々にまき散らしてもいます。(安物のサウンドカードがよくそれを拾ってしまいます。チーッ・・・チッ、チッ・・・。という音です。(^^; )
フラットケーブル用のフェライトコアも発売されていますが、私は使いません。
高周波の部類に入る SCSI の信号は、わずかなロジックのタイミングのずれでさえ、安定性に影響を与えます。フェライトコアを通すと、ノイズを低減すると同時に矩形の信号もなまってしまい、ロジックのタイミングがずれてきます。
私の後輩が、USB マウスのケーブルにフェライトコアを巻いたら、マウスが固まったらしいです。(^^; このエピソードは、フェライトコアを闇雲に使っても、かえって状況を悪化させる良い例と言えます。
ですから、フェライトコアはDC電源のような、定常的なラインや、せいぜい電話線やシリアルケーブルのような比較的低周波の信号線に対して使うべきだと思います。
SCSI ケーブル用シールド板の自作
では、どのような対策がよいかというと、ケーブルを外付けケーブルと同じくすっぽりとシールドします。私は、台所にあるアルミホイルと絶縁用にラップを使いました。もちろん、表面に絶縁処理を施したアルミ箔があれば、より簡単だと思います。今回は適切なものが見つからなかったので、お手軽に済ませました。(笑)
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写真6:アルミホイル製シールド版(アース付き)
(クリックで拡大画像)
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写真7:アース線の先端処理
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アルミホイルを2〜3重に折って強度を得つつ丁度良い大きさに切り取り、アース線となるコードを半田付けします。先端処理には丸くてねじ止めが出来る形状のものを使いました。最後にラップで包み、絶縁テープで止めて出来上がり。これを必要な数だけ作り、フラットケーブルに取り付けました。
写真8:内蔵フラットケーブル |
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写真9:シールド版を取り付ける
(クリックで拡大画像)
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なお、シールド板の材料には、銅が良いとおっしゃる方もいらっしゃると思いますが、銅は比較的低周波のノイズに効果がありますが、スイッチングノイズのような高周波ノイズには銅よりもアルミの方が効果的らしいので、今回はアルミを使いました。入手もはるかに容易です。
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