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第5回 2001/02/11 超激安時代の CD-R メディア選び

[ 目次 ]
 まえがき
(1)2001年初頭のメディア事情
 ・とどまるところを知らない価格下落
 ・低下した品質への懸念
(2)高品質メディアの危機
 ・こうして品質は落ちていった
 ・耐光性は性能のひとつに過ぎない
 ・UM Doctor Pro の解析結果を盲信すべきではない

 ・63分メディアはなぜ良いのか
 ・[コラム] 雑誌特集の功罪 - チョウチン記事を見破れ!-

(3)いまどきのメディア選び
 ・良いメディアの条件
 ・現在の問題点と今後について


63分メディアはなぜ良いのか
当サイトではたびたび、63分メディアを CD-DA 用途に使った時の優れた音質に関して説明してきました。最近では、よその BBS でも 63分メディアの素晴らしさについて語られている方も見かけるようになって、ちょっと嬉しいですね。(笑)
私は現行品として購入できるメディアの中で、太陽誘電の 63PY と TDK の 63S が現時点で一番理想に近いメディアだと考えています。
63分メディアは、74分や 80分のものと比べて、次の点が優れています。

・トラックピッチが広く、クロストークが発生しにくい。
・線速が速いので、ジッターが低く抑えられる。

トラックピッチが広いと、隣接トラックからの信号を拾ってしまう(クロストーク)現象がおきにくいので、サーボ量も小さくて済みますし、クロストークで汚れたパルスの波形整形も少なくて済むので、データ化けによるエラー発生も少なくなります。
また、ジッターとは線速方向の揺れですが、この揺れはどの線速であってもほぼ一定量が発生していると考えられます。つまり、線速が速ければ速いほど、線速に対する揺れの比率は小さくなります。
これによって線速の速い 63分メディアは、ジッターの影響が他のメディアに比べて相対的に小さくなるというわけです。

That's CDR-63PY

TDK CD-R63S

もう一つ重要な点は、価格の暴落から逃れられていることにあります。
既に一般向け市場の主流から外れている 63分メディアは、主にマスター作成用に業務用途として流通しています。稼ぎ頭ではないカテゴリーの製品ですから 63PY では白地に殺風景な文字で型番が書かれているだけであったり、63S に至っては未だに初代タフネスコートのデザインそのままで、何年も変わっていません。
生産量が極めて少ないため、品質管理基準を下げてまで生産量をふやす必要が無いのでしょう。ですから、どの時期に購入しても、比較的均一な品質を保っている感があります。(これでもプロの方にかかると、ロットのバラツキをしっかりと見抜くのですから、凄いと言わざるを得ません。)
今でもプロのレコーディングエンジニアにとって、CD-R メディアといえば 63分メディアがクオリティの基準となっているようです。いずれにしても、現時点で高い品質を維持している数少ないメディアであることには間違いありません。三井の Professional や誘電の Master などのマスター用で高品質な 74分メディアと比べても同等か、それ以上の音質を実感できます。

なお、63分 メディアの音質ですが、まずは各メーカー固有の傾向というよりも、既述した 63分メディアのもつ長所に起因する、共通の特長を一番強く感じます。例えるならば、CD-DA の音質では再生装置が1,2グレード上がったような、そういった違いを実感できます。まさに、音の「鮮度」が伝わって来るようです。
次に、63PY と 63S の音質差ですが、63PY は全域フラットな傾向で癖が無いので全ジャンルで使えますし、とりわけクラシックに適しているかと思います。対して 63S は、若干高域が強調される傾向があるので、ポップス等の明るめの曲に適していると感じます。
一枚 \200 〜 \300 という価格は、現在の基準から見ると高価ですが、これが一定水準の品質を保つことが出来る最低の価格帯ではないか、とも感じます。逆を言えば、このくらいの価格で高品質なメディアを安定して供給してもらえるなら、喜ぶユーザーは大勢いるであろう、ということです。
論より証拠。まずはお試しください。きっと耳から鱗(?)が落ちます。(笑)

[コラム] 雑誌特集の功罪 - チョウチン記事を見破れ!-
昔、何かで読んだのですが秋葉原の店員曰く、「雑誌をよく読んでくるお客ほどだまし易い」んだそうで。これは捨ておけないと思い、次のお話を...。

昨年あたりから、パソコン雑誌で CD-R/RW 特集を組む機会が非常に多くなった感があります。最近では、毎月必ず2,3誌は特集を組んでいるように思います。
でもご用心。雑誌の記事が必ずしも真実を伝えているとは限らないことは、意外に多くあります。結局は、様々な利害の入り交じった、どろどろした世界。一つの客観的な事実であっても、利害の絡んだ立場で説明すると、簡単にゆがんでしまう恐ろしい世界...。

さて、某新聞社系パソコン誌の2001年2月号で、CD-R/RW に関する特集記事を掲載していました。そこでメディアの品質に関する記述や、CD-DA での音質変化について、ある程度のスペースを割いて書かれていたので、購読された方も多いと思います。
ところが、私の会社関係のあるエンジニア(Aさん)から聞いた話の中で、問題の記事の解説には事実とは異なる誤った解釈や、ある立場から見て都合のよい見解で埋め尽くされている個所があり、問題だと指摘していました。
よく聞いてみると、問題点は以下の通り。

・CD CATS 測定結果の中の、SYM 値に対する誤った判断
・ここの CD CATS の測定結果自体の信憑性への疑問
・評論家の異次元的で理解不能な説明

まず SYM 値ですが、これはピットとランドのバランスを、ピットを基準に数値化したものです。経験豊富なレコーディングエンジニアが万全に整備した装置で書き込んだ CD-DA では、通常の SYM 値は、綺麗に0付近に集まるそうです。
その雑誌の記事では、この規格値は 5 〜 -15% で、現実は 0% よりややマイナスの -5% 程度が読み取りやすいと主張していますが、これは実際に測定用サンプルを焼いた三洋製ドライブが、SYM 値がマイナス寄りになる傾向があるためで、単なるドライブ固有の癖にすぎないそうです。にもかかわらず、雑誌では、マイナス寄りの傾向をあまたの CD-R ドライブ共通の傾向であるかのように説明しており、あやうく誤解しそうになります。あの説明は、自社ドライブの癖をあたかも普通の現象のように都合良く説明し、それを鵜呑みにした編者の検証不足と共に、読者に誤った知識を与える原因となっています。

次に CD CATS のデータですが、Aさんはいつも仕事で CD CATS を使っているので、得られる測定値がどのようなレベルとなるかは経験的に分かっています。
その彼をしてあの雑誌の CD CATS のデータを見ると、あれほど測定値が悪い CD CATS のデータは初めて見たと言っていました。(苦笑)
彼の経験から判断すると、測定条件(ドライブの電源、書き込み条件等)がよほどひどくなければ、あんなデータは出ないだろうとのこと。PIT-JITTER 値は全て悪化傾向だし、SYM 値はどのメディアでも、うねうねと曲がりっぱなし。ちなみに記事中の RICOH メディアの特性が比較的安定しているのは、システム自体が RICOH メディアをリファレンスとしている都合によるとのことでした。ちなみに、メディアメーカーさんも、「あれじゃ、規格外メディアだ」と泣きが入っていたそうで...。
つまり、あの雑誌が測定したデータ自体、とてもメディアを正確に評価出来るようなデータじゃなかったということらしいです。

上記の事実は、さすがに我々一般ユーザーではなかなか知り得ません。
誤った情報で、真実はいくらでも歪められてしまいます。その結果、まか不思議な迷信が巷にはびこる原因にもなります。
マスメディアは自らの責任をもっと重く認識し、事実関係をしっかり検証した上で、正確な記述を心がけて欲しいと願って止みません。

あと、メディアによる音質の違いに関する記事では、音楽評論家なる人物が、意味不明の論法を堂々と論じているのも、非常に問題です。なんでも、MD や CD-R メディアは、スピーカーと同じに論ずることが出来るそうで...。技術的根拠が皆無の、概念論に終始しているのは目をつむるとしても、その異次元のような理論を何度読み返しても、私には全く理解不能でした。(ご興味ある方は、該当する雑誌をご覧下さい)

いやはや、この特集の編者はただ、専門家と称する人物のコメントを自ら検証することもなく、ただ右から左へと通過させているだけなのでは、と疑わざるを得ません。
ちょっと考えれば、怪しい理論はすぐ分かるはずなのに...。

かくして、チョウチン記事は作られる。 これはもちろん氷山の一角。
たぶん私自身も今までに、けっこうだまされているんだろうなぁ、と思いますねぇ。
見抜けるか否かは、賢明な読者諸氏の眼力次第、ということ...。(合掌)

 

おっと、ここで終わりじゃない。(^^; さぁ、次のページへ。 >>

 

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