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■ 第７回 2001/08/09　超激安時代の CD-R メディア選び（実践編）

［目次］
　・まえがき
　・CD-R メディアの品質とは
　・テストの下準備
　・テスト結果（データ CD）- 解説
　・CD-DA の音質評価 - 解説
　・総括 - ＜コラム＞ -測定結果の安易な掲載が誤解を生む-

テスト結果（データ CD）

	品名（製造元）	反り	書き出し時間
1	Acer CD-R 74 (Acer Media) 74min	１：やや大（鉢）２：中（鉢）新：小（歪）	１： 6:29（4分くらい経過後に減速）２： 6:24（4分くらい経過後に減速）
2	Mr.DATA CD-R 74 (CMC) 74min	１：極大（鉢）２：極大（鉢）新：大（鉢）	１： 5:13 ２： 5:15
3	Data-lot CD-R (Wealth Fair Investment Ltd.) 80min	１：中（歪）２：小（歪）新：殆ど無し	１： 5:38 ２： 5:50（50秒くらい経過後に１度リトライ）
4	Externet Only CD/R (Fornet) 80min	１：極大＋（鉢）２：極大＋（鉢）新：極大＋（鉢）	１： 5:24 ２： 5:23
5	No Brand (Giga Storage) 74min	１：やや大（弓）２：中（鉢）新：極小（歪）	１： 6:21（4分17秒くらい経過後に減速）２： 5:22
6	Mxell Master Quality (Lead Data) 74min	１：極大（歪）２：極大（鉢）新：極大（鉢）	１： 5:25 ２： 5:21
7	No Brand (RiTEK) 74min	１：殆ど無し２：小（弓）新：殆ど無し	１： 5:21 ２： 5:16
8	SONY CDQ-74CN (Lead Data) 74min	１：極大（鉢）２：極大（鉢）新：極大（鉢）	１： 5:20 ２： 6:20（4分くらい経過後に減速）
9	Spark CDR74-24X (RiTEK) 74min	１：中（弓）２：小（弓）新：中（歪）	１： 5:15 ２： 5:07
10	TDK CD-R74 (RiTEK) 74min	１：中（歪）２：中（歪）新：中（歪）	１： 5:17 ２： 5:21
11	That's CDR-74TY (太陽誘電) 74min	１：極小（弓）２：極小（歪）新：殆ど無し	１： 5:16 ２： 6:01（4分30秒くらい経過後に減速）
12	That's CDR-74ZY （２世代前　旧品） (太陽誘電) 74min	１：やや大（鉢）２：やや大（鉢）新：やや大（鉢）	１： 5:15 ２： 5:06

※（弓）→弓状の反り、（鉢）→すり鉢状の反り、（歪）→平面の歪み
※反り方向は主に、テンガロンハットのつばのように弓状に一方向へ反る場合と、中心からすり鉢状にくぼむように反る場合、及びディスクがグニャグニャ歪んでいる場合の３通りがあります。　記録面を上にして、中心の浮き、端の浮き等をチェックしています。

凡例（反りレベル）
良い <-----------------------------------> 悪い
(極小) - (小) - (やや小) - (中) - (やや大) - (大) - (極大)

解説

反りについて
殆どのメディアで反りが見られることに、まず驚きました。
また、新品の状態と焼いた後では、反り具合に変化が現れるものも少なくありません。
本来ならば、焼く前と後で反り具合が変化すべきではありません。これは、レーベル面のコーディング剤や、レーベルの印刷の影響もさることながら、ポリカーボネイト基板の成形条件や材質そのものが大きく影響しています。
従って、焼く前と後で反り具合が変化するメディアは、品質を語る上ではマイナスとなります。
また、経年変化で避けきれない問題が吸湿で、反りの一因ともなっており、とりわけ古いメディアは要注意です。

さて、反り自体の程度ですが、最も平面に近かったのが RiTEK の無地盤、誘電の新 74TY でした。結果を見ると、RiTEK 系はどれも反りは比較的少ない（中以下）のが分かります。更に両者とも書き込みの前後で、殆ど平面度が変化しないのも特筆に値します。

Acer や Giga Storage は、新品の状態では平面度が高いのですが、書き込み後に大きく反りが出る傾向にあります。レーベル面の塗料の質以前に、ポリカーボネイトの成形条件に問題があるか、材質自体の質が低いと思われます。

意外に良かったのが、Data-lot です。書き込み後に若干反りが増えるものの、新品状態では殆ど反りもなく優秀でした。

ひどかったのが、Mr.DATA, Externet Only, maxell, そして SONY の４ブランド。
このうち、maxell と SONY は同じ Lead Data が製造元です。Lead Data は、かなり以前から品質に問題がありましたが、未だに改善されていないようです。国内のメジャーブランド向けのグレードですら、大きな反りが見られるのですから、その品質は大いに疑問です。（maxell はつい最近、OEM 元を誘電に切り替えたようです）
CMC も、自社ブランド Mr.DATA に限れば相変わらず三流レベルをばく進中といった印象。(^^;　ここは本来、OEM 向けに良質なものも生産しているんですがねぇ．．．。
これまた意外だったのは、Externet Only のひどさ。中心が 1mm くらい浮き上がるように反っており、目視で分かるほど。　レーベル面を見て明らかに反っているのが分かります（凹んで見える）。巷の評判がすこぶる宜しい Fornet 製の Externet Only ですが、基板の出来は評判からはほど遠いと言わざるを得ません。判定では例外の極大＋（プラス）としました。

That's の旧ZY も、あいにく反りが出ています。やはり生産されてからかなりの時間が経過しているため、吸湿などの経時変化による影響が大きいと考えられます。

HDD への書き出し時間について
テスト中に分かったこととして、高速回転する CD-ROM ドライブでデータを読み出す場合、ちょっとしたゴミや塵が記録面に付着しているだけでガクンと速度が落ちます。面白いほどにてきめんに結果として現れます。
従いまして、サンプルディスクの作成には、焼く時点で徹底的に記録面のゴミをブロワーで吹き飛ばし、全てのディスクでほぼ完璧に記録面をクリーンにしています。
HDD への書き出しの時も同じく、記録面を出来る限り完璧に近い状態まで綺麗にしてから CD-ROM へマウントしています。

結果を見ると、最も速かったのが旧ZY ２枚目の 5:06、次いで Spark ２枚目の 5:07 でした。　それ以外は５分１０秒台～２０秒台に多数がひしめき合っている状態。
この時間差は、書き出し時間が遅ければ遅いほど、読み出しをリトライしている回数が多いことを示しています。
ちなみに、シーケンシャル･リードとランダム・リードで、メディア毎の得手不得手は確認できませんでした。

また、全体の約 1/3 のブランドで、４分前後が経過した後に一度回転が停止し、減速した状態で最後まで書き出すといった現象が見られました。書き出し時間で６分を超えているものは全てこの現象が発生したことによるものです。
興味深いことに、これらのメディアは外周に近付く４分を越えた後で必ず減速が生じています。これは、ポリカーボネイト基板の成型時に十分な成型圧がかからず、グルーヴがきちんと転写されていない可能性があります。　一様に外周付近でエラーが増加しているので、スタンパーの状態が悪いというよりも、成型条件に問題があるのでしょう。　特に、誘電の 74TY は、リリースしたばかりですから、スタンパーが老朽化して荒れているとは思えません。１枚目ではまずまずの結果が出ていますが、たまたまかもしれないし、ましてや２枚目の結果を踏まえると、品質が良いと太鼓判を押せるとは、お世辞にも言えません。

あと、Data-lot の挙動は他とちょっと違っていました。
Externet Only と共に、80min メディアのサンプルとして用意したのですが、２枚目のディスクは書き出し開始後５０秒ほど経過した時点で一度停止し、リトライ後まもなく高速回転に復帰しました。
ただ、１枚目の結果を見て分かるように、無停止にもかかわらず書き出し時間が遅いです。
同じ 80min メディアの Externet Only と比較しても、その差は歴然です。
これは、４分経過後に停止したメディアとは逆で、成型条件の不都合よりも、スタンパーの状態が全体的に荒れている可能性を示していると思われます。
そのため書き出し中に、多くのリトライが発生しているのでしょう。

なお、これら途中で回転が停止したメディアは、全て再現テストを行ない、ゴミなどの付着による偶発的な回転停止ではないことを確認しております。

データ CD テストのまとめ
先に記述したように、反りの種類は主に、弓状、すり鉢状、ぐにゃぐにゃ歪み、の３通りが考えられます。
この内、すり鉢状の反りは、中心を基準に外周に近付くほど反りが増えていきますが、読み出し時の線速方向には反りが殆ど無いので、読み出しにはあまり影響を与える事が無いと思われます。
これに対し、弓状および、歪みがある場合、線速方向によるレーザーのフォーカスずれ（つまりピンボケ）が一定周期で常に発生することになり、ピックアップのフォーカスサーボは大忙しです。それでも、反り自体が小さいのであれば、影響は少なくて済みますが、大きければ読み取りエラーが頻発することでしょう。

さて、皆さんもうお気付きかと思いますが、それは、反りの程度と書き出し時間との間に、因果関係が殆ど見られないということです。
この結果はとても意外でしたが、これは今回使用した Plextor PX-40TSW の読み取り性能の優秀性によるところが非常に大きいと考えています。理論的には、これほど千差万別の反りがある中で、影響が無いとは思えません。つまり、PX-40TSW ではディスクの反り対策がしっかりと行なわれているということです。　今回は準備の都合で用意できませんでしたが、他のメーカーの CD-ROM ドライブを並べてテストすると、ドライブ毎の性能差が出てくると思います。
ただ、ここまでやるとホントに底なし沼なので．．．。(~_~;

いずれにしても、反り（特に弓状と歪み）は、読み取り性能に影響することでしょう。
今回ははっきりとした因果関係を示すことが出来ませんでしたが、あまたの CD-ROM ドライブにとって、悪条件を生み出すことは明白です。　もし今後機会があれば、別の CD-ROM ドライブを使って反りの影響をテストしたいと思います。

以上を総合的に判断して、データ CD を焼いた場合に一番優れていると思われるのは、RiTEK の無地ということになります。（マジで驚きました）
客観的に見て、RiTEK 製の Spark、TDK 共に反りも中以下ですし、書き出し時間も短く盤面の状態が良いことを表しています。シアニンとフタロに違いはあるにせよ、総じて良い結果を出しているのは RiTEK 製です。この会社は、本当に品質が向上しましたね。
ただ、よく見ると最新リテールモデルの Spark では、中心の透明部分のエッジがガタガタであったり、全体的に商品としての見た目は手抜き傾向です。今のところ直接的な質の低下は確認できませんが、その前兆と言えなくもありません。今後の動向は要注意です。

次はどこが良いかと言うと．．．あれれ？　これというモノが見当たりません(^◇^;)
強いて挙げるなら、誘電の現行 74TY でしょうか。　ただし、ご覧のようにスタンパーもまだ新しい状態でありながら、品質の面では安定しているとは思えません。　どうも、製造過程で手抜きをしているように勘ぐらざるを得ませんねぇ．．．。(^^;
まぁ、これも音質を評価すれば、おおよその解明ができるように思いますが。

あと、比較用の旧ZY ですが、古いメディアなので反りが出てきているのは非常に残念ですが、すり鉢状なので影響は少ないと思われます。　実際、書き出しテストでは２枚目のメディアで、全24枚中、最短時間を叩き出しました。こういう製品が市場から姿を消してしまったのは本当に残念です。

それ以外のメディアは、どれも大した違いはありません。(^^;
反りが少ない一方、書き出しで減速したり、逆に書き出しが速くても大きく反っていたりと、満足できるものではありませんでした。どんぐりの背比べですねぇ．．．。

さぁ、次のページではいよいよ、CD-DA の音質評価です。＞＞

　

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