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第7回 2001/08/09 超激安時代の CD-R メディア選び(実践編)

[ 目次 ]
 ・まえがき
 ・CD-R メディアの品質とは
 ・テストの下準備
 ・テスト結果(データ CD)- 解説
 ・CD-DA の音質評価 - 解説
 ・総括 - <コラム> -測定結果の安易な掲載が誤解を生む-


CD-DA の音質評価

CD-DA 評価サンプルの用意
評価は、同条件で再生した市販 CD の音質と、その CD から吸い出した WAV データを元に作成した CD-DA との音質を比較して行ないます。いつも私が音質評価用に使っている WAV データを使って、それぞれのメディアを焼いています。

音質の評価は皆さんご承知の通り、大変難しいと言えます。
それは、音質を「良い」「悪い」で語ってしまうことによります。当然ながら、良いという絶対的な指針は存在しないのです。 聴く人の数だけ、心地よい音の基準が存在するので、時として音質談義は不毛な論争に突入しかねません。基準が存在しないのですから、当然招かれ得る結果と言えなくもないでしょう。(^^; 強いて挙げるなら、オーディオ愛好家がよく口にする「原音に忠実」と言うことになろうかと思いますが、よく考えてみてください。「原音」自体、その演奏者とその場に立ち会った関係者しか知りえないものなんです。(^^;
まぁ、これは言葉の綾かもしれません。従いまして、「原音に忠実」という言葉を、「オリジナルソースに忠実」という言葉に置き換えると、即座に意味が通るのではないでしょうか。
つまり、今回の場合オリジナルソースとは即ち、市販 CD-DA のデータそのもので、それを基準に聞き比べるデータは、オリジナルから吸い出した WAV データを CD-DA として焼いたものと言うことになります。

評価は、極力主観を排除して行ないますが、それでも必ず自分自身の好みが無意識に評価に影響を与えます。これはもう、自分自身でも分かっております。(AV 機器の設計をしていた頃、オーディオ機器設計者の音質評価に立ち会った時に、実績のあるプロですらそういった先入観に惑わされる様を目の当たりにした経験があります。いわんや素人をや、ですね。)

そこで今回の評価方法ですが、
(1) 評価者である私が好む音質の傾向をここに提示します。
(2) オリジナルソースと比べて、音質の各部分(分解能、質感、高域・低域のボリューム感など)がどのように変化したかを5段階で評価します。
(3) 皆さんは、この (1) を踏まえた上で、(2) の評価を読み、各々の音質の傾向をイメージして下さい。

以上のような方法を用いることで、客観性を維持出来ると考えております。


評価者(私)が好む、音質の傾向
クラシックを主に聴いているせいか、癖が無くて高域から低域まで均一にバランス良く、且つ確実に鳴っているのが好きです。ドンシャリ系は苦手。
音場が浮かび上がるような、つまり、あたかもすぐ正面に奏者がいて、演奏している様子が見えてくるような、ぞくっとしたリアルさを好みます。 生き生きとした鮮度を感じる質感に惹かれます。 ですから、オリジナルソースから音が変化することを、あまり好みません。

試聴結果
5段階のうち、3がオリジナルと同等、これより低い数字だとオリジナルより劣る(または弱い)、高い数字だとオリジナルより優れる(または強い)傾向 とします。
つまり、3以外の値を示せば、それぞれがメディアの特徴と言えます。

  品名(製造元) 分解能 質感 鮮度 ボリューム感
高域 中域 低域
  オリジナル CD
1 Acer CD-R 74
(Acer Media) 74min
2 Mr.DATA CD-R 74
(CMC) 74min
3 Data-lot CD-R
(Wealth Fair Investment Ltd.) 80min
4 Externet Only CD/R
(Fornet) 80min
5 No Brand
(Giga Storage) 74min
6 Maxell Master Quality
(Lead Data) 74min
7 No Brand
(RiTEK) 74min
8 SONY CDQ-74CN
(Lead Data) 74min
9 Spark CDR74-24X
(RiTEK) 74min
10 TDK CD-R74
(RiTEK) 74min
11 That's CDR-74TY
(太陽誘電) 74min
12 That's CDR-74ZY
(2世代前 旧品)
(太陽誘電) 74min

解説

試聴してみて再び驚いたのは、RiTEK 無地盤の音質の良さ! オリジナルソースに極めて近い再現性を発揮し、あの野暮ったい過去のイメージからは想像もつかない程です。これは無地であるが故に、レーベル面の不透明な印刷などにレーザー光が乱反射するために起こる干渉などが起こりにくいこともプラスに働いているのかもしれません。
しかしながら、同じ無地でも音質が悪いメディアも存在しますから、レーベル面の処理がどうこう言うよりも元の作りがある程度しっかりしていなければ、音質はよくならないと思います。
今まで、幾度となく RiTEK 製メディアを試聴してきましたが、いつもソフトでシャープさに欠けるものばかりでした(ソフトな音色を好む方には適しているかもしれません)。しかし、この無地盤だけは違いました。一方、同じ RiTEK 製の TDK では、シアニン採用にもかかわらず、かなり悪いものでした。全ての項目に於いて、劣っていたと言わざるを得ません。分解能に至っては、12品目中最低レベル。 自社生産していた頃の TDK は、若干高域が明るめだったものの、生き生きとした雰囲気を伝える優れた音質だっただけに、今回の結果は非常に残念です。一方、フタロシアニンを採用している Spark では、TDK のようなこもった感じはなく、無地盤にかなり近い音質です。しかし、ボリューム不足な印象で、全体的にはオリジナルソースの雰囲気を再現して入るものの、鮮度の点では今一つ。まぁ、値段を考えれば、コストパフォーマンスは良い方でしょう。

RiTEK の無地盤と殆ど差がなかったのが、意外にも maxell Master Quallity (MQ) です。ディスクの出来の悪さはデータ CD のテストで既に分かっていたのであまり期待していなかったのですが、さすがに腐ってもMQ(失礼! (^^; )。
これに対し、同じくシアニン採用の Lead Data 製でありながら、SONY は、大した結果を残していません。音色が中域から高域にかけて脚色されて、キンキンした感じになっています。分解能も平凡です。
ちなみに、製造されたメディアには必ず品質のバラツキが起きるため、品質のグレード分けがあります。製品化したり OEM 供給する場合、そのグレードの差が価格の差となります。 今回の結果とは別の話ですが、よく聞く話に、OEM 先によって仕向けるグレードを分けていることもあるようです。 こういった区別が、もめ事の火種にならなきゃ良いんですけどね...。(^^;

さて、業界のパイオニア、太陽誘電の新74TY ですが、確かに分解能と質感の表現力は悪くありません。しかし、透き通るようなかつての高域は伸び悩み、何よりも鮮度が全く伝わってきません。 ただ、他の台湾製に比べれば確かに高音質ではありますが、昔の誘電はこんな程度ではなかったはず。

それが証拠に、旧74ZY の試聴結果をご覧下さい。
やや高域に派手さが見られますが、高域部分の暗騒音も同時に強調されることにより、ぞくっとしたリアル感が現れます。これが、CDU948S と誘電の 74min メディアの組み合わせによる、旧来の特徴です。もちろん、その他の項目に関してもオリジナルに極めて近い、優れた再現性です。レコーディングエンジニアの方々は、CDU948S で PMCD を作成する際、この高域の特徴を踏まえた上での音作りを行なっていると聞きます。

あと、Giga Storage もわりと良かったです。昔から台湾製の中では質の高い方でしたが、それは現在でも変わりないと感じました。
ただ、解せないのは Externet Only が今一つパッとしないこと。以前から好印象を持っていたこのブランドですが、テストが進むにつれ次第に疑念を持ち始めています。 良い良い、といわれている音質も、全く冴えません。
上記以外の Acer, Mr.DATA, Data-lot に関しては、一蓮托生。(^^;
CD-DA 用途には使えないこともありませんが、適さないと思いました。


試聴を終えた後の感想としては、予想外の RiTEK の優秀さが一番印象に残りました。
正直言って、RiTEK の無地盤は他の台湾ブランドと同様、どんぐりの背比べで終わるだろう、とあまり期待はしていなかったのですが、蓋を開けてびっくり。
一方、現在コンシューマー向けでは唯一生き残っている国産メーカー、太陽誘電の新74TY は、かつての輝きを失い、単に漠然と製品を供給していると言った印象を禁じ得ません。もはや、単なる国産品であるというだけで、質の面でのアドバンテージは失われた様子。でかでかと表示されている「Japan made」の文字が泣いています。

総じて言えることは、もう既に高品位な音質を手軽に楽しめるメディアは、皆無に等しいと言えます。分かっていたことではあるものの、このようなテスト結果を突きつけられると、今更ながらに落胆を禁じ得ません。

 
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