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第7回 2001/08/09 超激安時代の CD-R メディア選び(実践編)

[ 目次 ]
 ・まえがき
 ・CD-R メディアの品質とは
 ・テストの下準備
 ・テスト結果(データ CD)- 解説
 ・CD-DA の音質評価 - 解説
 ・総括 - <コラム> -測定結果の安易な掲載が誤解を生む-


総括

皆さん、ここまでお読みいただきまして、ありがとうございます。(^^;
長かったでしょう。もうすぐ終わりますよ。(笑)

全てのテストを終了して、本来ならばここで「お奨めメディア」の発表という場面だと思いますが、私はそれを行ないません。
冒頭でも言いましたが、このテストがそれぞれの製品の品質を断定するものではないからです。工業製品である以上、品質のバラツキは必ずあります。
ですから、最終的な判断は皆さんが行なうべきだと思っています。

しかしながら、確実に感じることは質の低下。 今回比較用に使用した旧74ZY は、現行メディアと比較すると、大変優秀な成績を示したのは見ての通りです。でも、このメディアだって、ほんの2年前にはごく普通に売っていたメディアの中の一つに過ぎなかったはず。 昔のメディアは良かったと、つい我々は口にしてしまいますが、むしろ現在のメディアが悪すぎると言った方が正確でしょう。
今回の結果を見ると、それが一目瞭然にわかります。

さて、皆さんはどうお感じになったでしょう。
ご興味を持たれましたら、是非皆さんもトライしてみてください。
実際に行なうと、なかなか面白いですよ。
繰り返しますが、最後の判断はやはり皆さん自身です。
今回の特集が、ご自身が一番良いと思ったメディアを見つけ出す一助になれば幸いです。


※今回のテスト結果ですが、予算と時間の都合でエントリーしていないブランドも数多く、今後の新製品ではまた違った展開を見ることが出来るかもしれません。
従いまして、テスト結果の表を抜き出し、「webcoms 資料室」にて公開しようと思います。新しいデータを順次追加し、常に更新できれば良いかなと考えています。
テスト希望のメディアがあれば、ハマリモノ BBS にてご要望いただければ、出来るだけ対応したいと思います。(当方の都合もありますので確約は出来ませんが...。(^^; ) また、メディアのご提供も随時受け付けております。

しかし、特集を一本やると結構お金がかかりますねぇ。
広告募集しようかな...。(^^;

<コラム> - 測定結果の安易な掲載が誤解を生む -
「技術解説第5回 超激安時代の CD-R メディア選び」の中で私は、UM Doctor Pro の解析結果を盲信すべきではない、と書いたことがあります。
それを書いたきっかけは、当時盛んに雑誌で UM Doctor Pro で解析した C1/C2 エラーのグラフを掲載しており、C1 エラーが頻発するメディアに対しては頭ごなしに駄目なメディアであるといった雰囲気がユーザー間に広がっていたことを受けたものでした。
これは、掲載するグラフが示す意味をライター自身がよく理解せず、且つ C1/C2 エラーが頻発したメディアへの説明が不十分だったために起こった誤解でした。

簡単に説明しますが、C1 エラーは訂正可能なエラーですから、最終的には完全に訂正されてしまうエラーです。ですから、C1 エラー自体は直接 CD-DA の音質には殆ど影響しません。
音質に影響を与えるのは、ジッターや記録面の状態などが起因する訂正不可能なエラーやデビエーションにより欠落した部分を、前後の音声データによって補完するために生じる、オリジナルとの差異によるものが多くを占めます。ですから、C1 エラーが直接音質に影響を与えていると言うのは誤解です。
但し、C1 エラーが多いメディアは多くの場合、記録面が荒れていることを示しているのは事実です、しかしその C1 エラーが必ずしも音質を悪化させているとは限りません。現に国産時代の三井では、C1 エラーが多い傾向にありながらその音質を好むユーザーが多かったのは記憶に新しいことです。その様な経緯もあり、先の特集では C1 エラーが音質の悪化に「直接関与する」のではなく、音質悪化の要因が存在する可能性を「間接的に示唆する」もの、と説明した次第です。

グラフという視覚的効果を有する手段で測定結果を掲載することは、読者の興味を引くためにはとても有効な手段だとは思います。 しかし、十分な知識を持たずに掲載することは、誤った情報を流布してしまう危険性をはらんでいる事を自覚すべきです。


次に、最近私が危惧しているものを一つ。
CD-R 関連の記事は、とかく CD-DA の音質に言及することが多く、最近は RF 信号(いわゆるアイパターン)を掲載してメディアの良し悪しを語る雑誌をたまに見かけます。 詳しい内容は失念しましたが、メディアの品質を調べるために CD-DA を焼き、その RF 信号を比較するといった内容だったと思います。

その主旨自体は興味深くて良いのですが、問題はその内容です。
8倍速や12倍速といった高速で CD-DA を焼き、それぞれ RF 信号を比較して、かつての定説「CD-DA は等速で焼け」の妥当性を探ろうというもの。
その概要は、等速で焼いたメディアと、高速で焼いたメディアの RF 信号を比較して、ジッターの量を目視で比較すると共に、現行メディアでは高速書き込みに最適化されているので、なるべく高速で焼くのが良いと結論付けようとしていました。
確かに、一見納得できるような記事にまとめられておりますが、その内容をよく読むとその結論を導き出すための理論が間違いだらけであることが分かってきます。

この理論の問題点は主に、以下の3つに大別できます。すなわち、
(1)書き込み速度とジッター成分の割合変化に対する無理解
(2)CD-DA の等速焼きに関する理解不足
(3)最適な書き込み速度に対する理解不足

ジッター成分とは、書き込み速度に関わらず常に一定量が発生していますから、書き込み速度が速ければ速いほど、線速に対してジッター成分の占める割合が小さくなるのは当然です。
例えば同じシステムを使って等速書き込みをしたものと、8倍速書き込みをしたもののジッターを比較すると、8倍速書き込みの方は単純計算で等速の1/8になります。
ですから仮に雑誌等で、8倍速書き込みの方がジッターが低いと書かれていたとしても、全く驚くことはありません。簡単に想像が付くようなごく当然の物理現象をわざわざ実験で確認しただけに過ぎないのです。
RF 信号波形はジッター成分やシンメトリー値を視覚的に把握するには効果的ですが、それはジッターがある、と言う事実を示しているだけで、メディアの品質を語っているわけではありませんし、適正な書き込み速度を示してもいません。 例えメディアが高品質でも、CD-R ドライブのスピンドルモータの出来が悪いとジッターが増えますし、スピンドルモーターの出来が良くてもサーボ定数の設定が悪いとジッターを押さえきれない可能性も出てきます。C1 エラーの件でも述べましたが、RF 波形の目視というたった1つの測定項目だけで、メディアの品質を語るのは間違いです。

このような記事を書く場合、まず最初にやらなければならないのは、何故 CD-DA では等速焼きが良いとされているのか、を考えることから論じることです。
CD-DA に限らず、CD を作成する場合、形成するピットは可能な限りプレス CD のようなシャープなエッジを形成することが求められます。 それには、出来るだけゆっくり記録した方が、エッジがシャープで、長さも規格に近いものとなります。 ぼやけたピットは長さ方向のエラー(デビエーション)の発生を助長します。 高速で書き込めば書き込むほど、ピットのエッジはシャープさが失われます。そういった高速書き込み時の問題を解消するために、メディア側がレーザーに対する感度を上げたり、色素の塗膜を薄くして感度を上げる工夫をしています。これがいわゆる高速書き込み対応です。書き込み行程はまさに、アナログ行程であるということを忘れてはなりません。
余談ですが、カセットテープの高速ダビングが音質を低下させるのは、とりわけ高域成分を再現する極小幅の磁気信号が、高速ダビングだと正常に形成されにくいことによるものです。

さて、話をジッターに戻しますがメディアのジッター成分のみを判定するには、前述したような CD-R ドライブ側が持つ不安定要素を極力排除しなくてはなりません。そのためには基本性能の高いクラシックな CD-R ドライブ(CDW-900E や CDR100 等)で等速で書き込んだメディアを CD CATS で解析すれば完璧ですが、それが可能な方は限られます。 (^^; なので、ジッターメーターで測定するのが最適ですが、もうちょっと現実的な方法としては RF 信号を比較するのも1つの方法です。
しかし、最大の問題点は、これらクラシックドライブは、最近の高速書き込み用にチューンされたメディアでは、書き込み条件を最適化しきれず、正常な書き込みが困難であることです。
表面上は等速から 24倍速まで、全速度対応を謳っているメディアであっても、その実はそれ程の守備範囲を持っているとは言えないのが実状です。 かといって、低速をカバーしようとすると、高速書き込みに支障が出てくるため、「アチラを立てればコチラが立たず」の状態になっています。

故に、現行のメディアではジッター成分を RF 信号で判断するには、一般的な方法では極めて困難であると言わざるを得ません。 不確定要素が多すぎて純粋な比較が出来ないのです。
そう言った状況にもかかわらず、雑誌の記事では、強引に理論を展開しているところが問題です。RF 信号の波形を掲載すれば、視覚的効果はありますが、もともと論拠がトンチンカンなところに、直接的な意味を持たない RF 信号波形を掲載することで、読者を煙に巻いています。 実際、あれこれとグラフや写真を見せつけられたら、誰でも何となく分かったような気になるものです。(^^;
ジッターについて正しく知りたければ、RF 信号の意味を正しく解説している、素晴らしいサイトが存在します。管理人さんはその方面の技術屋さんのようですから、情報は確かなものに違いありません。

UM Doctor Pro の解析結果や RF 信号などの画像は、記事にハッタリをかます効果はありますが、その本当の意味を理解しなければ、読者に誤解を与えるだけです。逆に、正しい意味をきちんと解説したならば、素晴らしい記事になります。 これから記事を書く場合は、それを十分に認識して欲しいと願ってやみません。

2001年8月9日 (C) COLT-T
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